『認知症世界の歩き方』という本が10万部を突破と聞いて、
関心の高い人が多いんだな、と感じました。
自分のしたことを忘れてしまうのは、なぜ?
あてもなく街を歩き回ってしまうのは、なぜ?
人の顔がわからなくなるのは、なぜ?
大好きだったお風呂を嫌がるのは、なぜ?
コンロの火を消し忘れてしまうのは、なぜ?
同じ服ばかり着たがるのは、なぜ?
人の話を集中して聞けないのは、なぜ?
などを紹介しています。
「本人が、お風呂に入るのを嫌がって……」
介護をされる方から、よくお聞きする話。
見方によっては「介護への抵抗」と感じられる、その人の「お風呂に入りたくない理由」は1つではなく、実はその背景には、さまざまな認知機能のトラブルがあると考えられます。
たとえば、
1.温度感覚のトラブルで、お湯が極度に熱く感じる
2.皮膚感覚のトラブルで、お湯をぬるっと不快に感じる
3.空間認識や身体機能のトラブルで、服の着脱が困難
4.時間認識や記憶のトラブルで、入浴したばかりだと思っている
単純に、家族に手間をかけさせたくないと思っている、という場合もあるでしょう。
このように、お風呂という1つのシーンをとっても、その人が抱える心身機能障害(心と身体の不調・トラブル・誤作動)や生活習慣・住環境によって、なぜ・どんなことに困難を感じるのかは異なるのです。
つまり、認知症を「ひとくくり」にしない。
それが、とても大切なことです。
私がお会いしたことのあるデイサービスの利用者さん。
やってくるたびに玄関先で文句を言い部屋に入ってこない。
気が済むまで文句を言わせておくという方針で、
ヘルパーさんは無視。
えー、そうなの!?
驚いたんですが、本当に1時間ほどするとスッと部屋に入ってきて大人しくなりました。
話を聞けばその利用者さんは元看護婦長さん。
どうもデイサービスの職員さん達にダメ出ししてたようです(苦笑)
働いていたときの記憶が交差してるのかな。
元看護婦長さんは家族にもこのような態度なのかな。。。
こんな悪態をつくおばあさんの面倒を見るのは嫌だろうな。。。
元看護婦長さんと聞いた私は、敬語に気を付けて話しかけてみました。
すると、元看護婦長さんはとても満足そうにニコニコ笑っていました。
多分ですが、自分はエラいんだぞ、と認めて欲しかったのだと思います。
認知症になると、自分がいちばんよかった時代に戻ると聞きますから、
元看護婦長さんは、婦長さんだった頃がいちばんよかった時代なのでしょうね。
母に、
「どの時代がいちばんよかった?」
と聞いてみたことがあります。
「どの時代も大したことないわよ」
娘に生きる喜びとか、そういうことをまったく伝えない母なのでした。