「殺せ~」と騒ぐので…認知症の父に、ビールを飲ませてみたら
という記事を読みました。
ますます大きな声で、自害するだの、殺せだの大騒ぎ。
理由を聞いても私にはまったく何を言っているのかわからないが、とりあえず共感だよ、共感! と本に書いてあるとおりに「そうなんだね。それは大変だったね」と言ってみるものの、ますます興奮するばかり。
精神安定剤はないし、どうしようかと途方に暮れていたその時。
……ピカッとひらめいた! 「そうだビールを飲ませて、寝かせてしまえ!」
じーじは、根っからの呑んべぇ。とくにビールは大好物。
最近めっきり弱くなったので、たいがい350ml1本飲むと眠くなる。
「まあまあ、ビールでも飲んで、何があったのか話を聞かせて」と言ってビールを差し出すと、「お! ビールか、喉が渇いていたからな」と、すんなりビールを飲むじーじ。
あれだけデカい声出していたらそりゃあ喉も乾くでしょうと思いつつ、まずは、作戦成功。
話を聞くと、「いくら注意をしても部下の態度がよくならない」とか「部長の指示が悪い」などと言うじーじ。
「部下?」「部長?」どうやらじーじは、デイサービスを会社だと思っているらしい。
何か気に入らないことがあったようで、かなりのお怒りモードでいろいろ話すものの、どうして「自害する」になってしまうのか原因はわからずじまいだった。
そのうち気分も落ち着き、1時間後には地球人のじーじに戻り、ほろ酔い気分でご就寝。
なるほど、好物を出すと大人しくなるのか。
認知症に限らずそうした、たしなめ方もありますよね。
私は怒りがおさまらない先輩に好物のアイスクリームを差し入れしたことがあります。
先輩は怒りながらアイスクリームを食べ、食べ終わったら気分が治まってました。
もしも母が認知症になって興奮したら「飴でも舐める?」「こっちでお茶でも飲もうか」と聞けば、気が逸れるかな?
この記事は、黒川玲子著『認知星人じーじ「楽しむ介護」実践日誌』を抜粋したものとのこと。
認知症のアドバイスに「ビールを飲ませなさい」なんて書いてある本は無いと思うけれど、体験談だと思わぬアドバイスを発見できますね。
一般的な対処法ではなく、こうした個人に見合った対処法を見つけるには、体験談が参考になるかもしれません。
著者の黒川さんは博報堂勤務を経て、埼玉県内の介護事業会社勤務。
2001年より成長期の大手介護事業会社において、広告宣伝室室長として、 社外向けの広報誌の作成、入居者促進業務に携わるなど、書き手のプロであり、介護業界にも精通している方です。
どうりで内容にエンターテイメント性がありつつも、ちゃんとタメになる。
じーじがデイサービスを会社だと思っているのが笑ってしまう。
「いくら注意をしても部下の態度がよくならない」なんて、以前は立派な役職についていたのかな。
地位が高くて威張っていた人ほど、認知症になったとき人を怒鳴る傾向にあると聞いたことがあります。
じーじが、カレンダーの日付を毎日聞いてくるエピソードでは、後にじーじの行動の理由がわかります。
じーじにどうして毎朝日付を確認するのか聞いてみたところ、
「今日は風呂に入る日かどうかを知りたかった」
とのこと、お風呂に入るのは火・木・金で、Sというデイサービス。
じーじが知りたかったのは、今日お風呂に入れるか入れないかだったらしく、日付はおまけみたいなものだったようだ。
本当に知りたいのは風呂の日だったんですね。
認知症の難しいところは「風呂の日はいつ?」と聞けないけれど、
「デイサービスの日はいつ?」は聞けるんですよね。
認知症の高齢者の行動には理由がある、とは聞いてますが、真意を探るのは容易では無いなぁ。
慣れたらわかるものなのだろうか。
月の下旬か、初日に母に電話すると、
「カレンダーはめくった?」
と聞くようにしています。
カレンダーがいつまでも古いままだと恥ずかしいと母は思うからです。
入所した頃は、カレンダーをめくるのを忘れることがありました。
最近は1日前にめくってしまうことがあり「遅いよりはいいでしょ」と言っています。
”ちょうどぴったり”というところでおさまらないものですね。