第83回直木賞を受賞作品だと知って読みたくなりました。
向田邦子さんの「かわうそ」を女優・奈良岡朋子さんの朗読があると知り聞いてみました。
奈良岡朋子さんの朗読は素晴らしかったです。
自分で本を読むより、ずっと面白く感じました。
かわうそは、どちかというと暗い話だと思います。
けれども、その文章表現が素晴らしく、また聞きたくなります。
どうしてこんなにも惹かれるのか。
向田邦子という人物を知ってみると、このお話は向田邦子と恋人が、もしも夫婦になったらなら、という空想をもとに描かれた物語のように感じました。
恋人も主人公と同じく脳卒中を患っていました。
実際、向田邦子はかわうそに似ていると言われたことがあるそうです。
主人公の指先からタバコが落ちて、そのことに違和感を覚えます。
しかし、妻にそのことを伝えるのを躊躇い、それを言わずに終わります。
どうやら脳卒中の前兆だったようです。
もしも主人公が、その違和感を妻に漏らしたなら、頭の回転の良さそうなその妻なら「病院へ行きましょう」と連れて行ったかもしれない。
けれども、家事でも葬式でも、いつでも楽し気な様子の妻に、病院でも楽し気にされるのは、あまり気の良いものではないでしょうね。
なんとなく言わない、というか、言えない。
その微妙な心理が「かわうそ」で表現されているところに惹かれているのか。
自分がこの作品のどこを気に入っているかわかりません。
奈良岡朋子さんの朗読が気に入っているのかも。
母には向いてない小説だと思うので送りません。