高齢な母が「本を読んでいる」
何を読んでいるか訊ねると曽野 綾子さんの『私の後始末』と言う本でした。
「何度も読んでるの。曽我綾子さんの本はどれも面白い」
というので、どんな内容か聞くと、母は本をどっこらしょと引き寄せて、眺めながら教えてくれる。
”「手抜き、ずる、怠け」を上手に使う”でしょ、
”暮らしぶりの優劣と幸福は関係ない”
この方はキリスト教徒だからちょっと考えが、、、なんというか、そういう感じ
(そういう感じってどういうこと?)と心の中でつっこむ私。
「それから、”死にざまをみせる”」
「え?死にざまをみせる?」
「そう」
「死にざまをみせるってどういうこと?」
えーっと、母はそう言って本を読みはじめる気配がしたので、
「何度も読んでるんじゃないの?」
「いい加減に読んでるから覚えてない」
母が言うには、読んでるときは(なるほど!)と感心したり、共感したりするようですが、読み終わると同時にすっかり忘れてしまう。
それって、読んだだけってことよね?
やっぱり母だ。
「じゃあ、読んだら”死にざまをみせる”ってどういうことか教えて」
「わかった」
母が覚えていれば”死にざまをみせる”を教えて貰えることになりました。
調べたら、『私の後始末』は曽我綾子さんのこれまでの書籍から特に心に響く文章を269集めたものとのこと。
なるほど、母の心に響くわけです。