山本周五郎 の『四日のあやめ』を読みました。
深松が早朝に急いで伝言をしたのに、妻は夫に伝えなかった、それが発端になる話。
私は山本周五郎のハッピーエンドに終わる小説が好きですが、
『 四日のあやめ』はハッピーエンドなのかどうか難しい。
概ねハッピーエンドなんですが、一方では違うという感じ。
妻が夫に伝言を伝えなかったのは、夫を大事に思っていたからです。
定年退職した男性が、会社を辞めたらそれまでの付き合いが無くなった。
あれほど仕事を振った相手も、会社を辞めた途端に愛想も無くなる。
そんな話を聞きますが、それに似たような感覚を夫・五大主税介(ごだいちからのすけ)は感じたのではないかな。
真相を確かめもせず、過去の恩も忘れて愛想を尽かす。
そんな奴らを自分は命を懸けて守ろうとしていたことが馬鹿馬鹿しくなったし、関係が崩れるような自分の人望の無さに失望もしたのではないか。
そして、自分に残ったのは「妻の千世」と気がついたのでは。
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ちょっと面白かったのが、妻の千世。
五大主税介が28歳だから、妻の千世はそれより年下かな。
夫の体臭にムラムラしたり、夫の寝室へ行ってムラムラしたり。
(この時代の夫婦って寝室が別なんですかね?)
漫画「のだめカンタービレ」でも、のだめが千秋先輩のニオイを嗅ぐためにシャツを洗わないでとっておく場面が何度かでてきます。
ニオイフェチって言うんでしょうか、『 四日のあやめ』の千世をのだめのように想像したら、この小説もコメディのようにも読み取れる気がします。
五大は身長が五尺九寸。
えーっと、つまり約178.8cmと、この時代にしてはかなり背が高い。
そして筋肉質で、髭が濃い。
口数が少なく、剣が強い。
えっ、怖くない?
千世はそんな五大に恋をして結婚したというのだから、マッチョな男らしい男性が好きなんですね。
五大は千世から縁談が無ければ生涯独身タイプだったのではないかと思います。
青空文庫にありますので、よかったらお読みください。