遠くの両親(介護保険施設)、わたしの暮らし 

脳梗塞で父が倒れ介護保険施設の生活をスタート。遠方で暮らす両親とわたしの日々


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脳梗塞を患って椅子に座って毎日を過ごす父、その世話をする母、両親の老いに直面する息子。重松清・短編小説『みぞれ』(感想レビュー)

重松清の短編『みぞれ

脳梗塞を患ってただ椅子に座って毎日を過ごす父、

その世話をする母、

両親の老いに直面し、ふたりを気遣いながらもついきつく当たってしまう息子。

みぞれ (角川文庫)

みぞれ (角川文庫)

 

 

父が脳梗塞を患った私は、ドキッとしました。 

 

東京から故郷の実家に帰省した息子が、前回よりもさらに弱った父を見て

 

身体の自由が効かず、言葉を無くし、表情も無くして、それでもまだ人は生きる目的や楽しみを持ち続けていけるものなのだろうか。

 

父が脳梗塞になりたての頃、私も似たようなことを思ったものでした。

 

けれども時間が経つにつれて、父が何か生き甲斐をもたなくてもいいじゃないか、と思うようになりました。

 

思えば、父は真面目に働いてくれたほうだと思います。

 

おかげで生活に苦労した思い出はありません。

 

お金持ちでは無かったけれど、お腹いっぱいのご飯はたべさせてくれました。

 

施設の費用も、父の年金で賄えています。

 

これまで苦労してくれたんだから、生きていればいいじゃない。

 

そう思うようになりました。

 

 

短編小説『みぞれ』で、高齢になった母親が、帰省した息子に好物を作ってあげる場面があります。

  

「大丈夫なの?

 油とか危ないからさ、あんまりやって欲しくないんだよね」

 

「今も?火にかけてるの?危ないよ。止めてきてよ」

 

 息子が大げさなまでに心配する様子に笑ってしまう。

 

いや、本当に危ないんですよ。

 

息子の気持ちもとてもよくわかります。

 

でも改めてこうして小説で会話にされると、滑稽で可笑しい。

 

そして息子のために何かしてあげたいと思う母の気持ちもわかります。

 

母親が亡くなった後、息子はこの日のことを想い出すんじゃないかな。

 

短編小説『みぞれ』は、静かに心に沁みるお話でした。

 

おすすめです。

 

関連リンク 重松清・短編小説『みぞれ』