遠くの両親(介護保険施設)、わたしの暮らし 

脳梗塞で父が倒れ介護保険施設の生活をスタート。遠方で暮らす両親とわたしの日々


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豪雨で14人犠牲の特養ホーム、ほぼ全職員解雇へ。洪水浸水想定区域にボートなどの避難具が常備されてない不思議。

 

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「豪雨で14人犠牲の特養ホーム、ほぼ全職員解雇へ 再開難しく」のニュース。 

 

球磨川の氾濫による浸水で入所者14人が死亡した球磨村の千寿園が、事業継続を断念し、職員のほぼ全員を解雇することが分かりました。

千寿園の顧問弁護士によりますと、今月21日に施設長から「用地確保の見通しなどが立たず事業継続を断念する」として「従業員88人の9割程を今月末で解雇する」と報告を受けたということです。

 

村によると、慈愛会は村の高齢者施設を運営する民間では唯一の法人。村は「高齢化率44%の村にとって(施設の)必要性は高い」とする。犠牲者遺族の1人も「地域のためにも残ってほしい」と話す。救出された51人は人吉医療センター(同県人吉市)と公立多良木病院(同県多良木町)に運ばれた。受け入れ先が見つからない約25人が現在も入院している。 参照豪雨で14人犠牲の特養ホーム、ほぼ全職員解雇へ 再開難しく(西日本新聞) - Yahoo!ニュース

 

特別養護老人ホーム(特養) が村から無くなる。

深刻です。

これまで特養を利用されていた入所者さん・家族はどうしたらいいか。

千寿園は先日も述べましたが、とても立派できれいな施設で、自然に近く高齢者にとって過ごしやすい施設だったと思いますから、今回のことはとても残念です。

また地元民にとっても自宅から通いやすい職場だったはず。

球磨村やその近隣地域も含めて、特別養護老人ホームの数は多くありませんでしたから、待機高齢者にも大打撃だと思います。

 


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球磨村のような昔ながらの土地で大規模な洪水が起きたことや、特養が3mも浸水したことが不思議で調べてみました。

特別養護老人ホームは公的な施設で、経営は地方自治体か社会福祉法人に限られています。

 園は球磨川と支流の「小川」が合流する洪水浸水想定区域内に位置しており、現地での再開は難しいと判断。

 

特養(千寿園)が洪水浸水想定区域内に位置しているとあります。

特養は公的な施設ですから、場所も慎重に検討されたはずです。

特養を建設する際はどうだったのでしょうか。

 

日本における洪水ハザードマップは 1994 年の建設省(現国土交通省)の通達から始まり、平成 2001 年の水防法の改正を受け、多くの自治体で進められてきました。

平成 17 年(2005年) 7 月からは、浸水想定区域を定める指定河川を中小河川まで拡大し、洪水ハザードマップの作成を義務付けることなどを骨子とする水防法の改正が行わ れています。

参照 洪水ハザードマップの公表効果とその問題点-日本を事例に- .pdf

  

特養(千寿園)の事業開始は2000年頃のようなので、洪水浸水想定区域内に建設時には定められていなかったのではないでしょうか。

そうなると、洪水浸水想定区域内に定められた時に伝達が自治体からあったか、どれくらいの防災対策をしていたか、そのあたりがひとつの焦点になるように思います。

 

球磨村では洪水ハザード マップを Web 公開していないが、「洪水警報の危険報では、同老人ホームの地点で想定される浸水深は 5.0m 以上として図示されていた。実際には一階の屋 根まで、約 3m 浸水したとみられる。

参照 令和 2 年 7 月豪雨による熊本県人吉市および球磨村渡地区の洪水被害の特徴.pdf

 

産経動画・熊本豪雨 被災した「千寿園」 熊本県球磨村人吉市

 

平成25年度国土交通省国土技術研究会にて(2013年)

 

球磨村渡地区は熊本県が管理する支川小川が球磨川に 合流する場所に位置しており,表-1に示すとおり近年10 年間で5回の家屋浸水被害に見舞われている.

当該地区 は球磨川上流域において外水氾濫により住家の浸水被害 が発生している唯一の地区であるため,早急な浸水被害 軽減対策が重要課題となっている.  

浸水被害の要因 浸水被害の要因としては,球磨川本川の水位上昇に伴 って小川への背水による小川無堤部からの外水氾濫,ま た渡地区を取り囲む山地部からの雨水流入,及び地区外 の雨水を運んでくる農業用水路等による内水氾濫が相ま って発生していることが考えられる.

 

球磨村渡地区における水位低減対策として,今回「導流堤」を最適案としたが,設置後の洪水流により河道が 変化し,瀬の位置等が変わる可能性もあるため,導流堤 設置後のモニタリングが重要である.

参照 球磨村渡地区の浸水被害を防ぐために ~地域や熊本高専と連携した取り組み~.pdf 

 

以前から球磨村の洪水は問題視されていたようで、取り組みがなされていたことがわかりました。

問題視されていた洪水は千寿園の下流球磨川沿いの住宅が度々浸水するというもの。

最適案として出されたのが『導流堤』

導流堤とは泥流や土砂流の流れる方向を制御し、安全に流下させて土砂氾濫の拡大を防ぐ堤防です。

検討した翌年の平成26年(2014年)には導流堤が完成していますから、迅速な工事が行われていることも伺えます。

 

 洪水のたびに球磨川の背水の影響を受けた支川小川が氾濫し、浸水被害が発 生していた球磨村渡地区において、支川小川の水位低減効果を図り、氾濫を防ぐ ことを目的とした導流堤が平成26年3月に完成しました。

また、導流堤の近くには、内水被害軽減のための排水ポンプ施設も完成

参照 球磨川の導流堤が見られます 球磨村渡地区.pdf

 

尽力にもかかわらず、今回の洪水が起きてしまったことがわかりました。

しかし、 

 

 導流堤により球磨川本川河幅を狭めることとなり,他地点への水位上昇を誘発する影響が予 想される.そのため,総合的に判断して最も有利な諸元 を設定する必要がある.

 

導流堤検討の際に「河幅を狭める」という言葉がありました。

水位の高い本流(球磨川)が壁となって支流の流れが滞り局所的に水位が上昇する「バックウオーター現象」が起きやすくなっていた可能性があります。

 

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導流堤のほかに、もう1案『砂州浚渫』がありました。

砂州浚渫とは堆積した土砂を取り除き、川幅を広く戻す方法です。

しかし、川の生態系に影響を及ぼしやすいそうで、 

 

球磨川本川左岸側には,球磨川 48瀬の1つである熊太郎の瀬が存在し,鮎釣り場として 有名であるため,河川内に人が入る機会が多い場所であ る.また,舟下りやラフティングコースでもあることか ら,河道内に設置する導流堤は景観に配慮した検討が必 要となる.

 

鮎釣り場などの理由や、費用面から導流堤に決まったのでしょう。

それでも、洪水警報の危険報では、特養(千寿園)の地点で想定される浸水深は 5.0m 以上として図示されていましたから、導流堤でカバーできる想定雨量は低いものだったと思われます。

砂州浚渫にしておけば洪水は起きなかったか、それはわかりません。

 

球磨川は「ダムによらない治水」を目指し、2009年に川辺川ダム計画中止している背景があります。

2020年7月豪雨災害を受け、蒲島郁夫熊本県知事が、

 

「国、県、流域市町村でダムによらない治水を検討する場を設けてきたが、多額の資金が必要ということもあって12年間でできなかったことが非常に悔やまれる。

そういう意味では球磨川の氾濫を実際に見て大変ショックを受けたが、今は復興を最大限の役割として考えていかないといけないなと。

改めてダムによらない治水を極限まで検討する必要を確信した次第だ。」 

 参照 蒲島知事「『ダムなし治水』できず悔やまれる」 熊本豪雨・球磨川氾濫 - 毎日新聞

 

蒲島郁夫熊本県知事のおっしゃる多額の資金とは、

 

最も安い策で約2800億円もかかり、引堤や堤防嵩上げなどで移転戸数が 約340戸にもなるというのですから、実現の可能性はないと思います。参照 球磨川治水対策協議会 会合で国と県、10案示す 知事・流域首長会議で検討へ /熊本 | 水源連

 

引堤(ひきてい)(堤防を移動させて川幅を広げる)に取り組んでこられたようですが、 それでも今回の大雨には間に合わなかったようです。 

河道掘削(かどうくっさく) を行っている河川は多いですね。

普段は水の流れが少ない川で、大雨になると水が出る川に河道掘削が行われるようです。  

河周辺の整備が思うようにすすまないなら、林業にも力を入れてはどうかと思います。

千寿園の上流にハゲ山が目立ったことや、近年、個人の山は手入れをせずに放置され荒れているケースもあります。

森林ダムの保水効果を存分に発揮させることで上流から流れる水の量を減らせると考えます。

緑のダムを科学的に理解するため基礎知識(多くの人が誤解している森林の保水力)蔵治光一郎.pdf』がわかりやすいと思います。

 

過去の球磨村の浸水被害は、

H18年床上浸水14件、床下浸水16件、

H23年床上浸水3件、床下浸水3件

といったところでしたが、

 

九州豪雨で特に大きな被害が出た熊本県球磨村で、床上浸水した家屋が少なくとも470棟あったことが13日、分かった。参照 球磨村、470棟床上浸水 熊本県で5500棟超―豪雨被害:時事ドットコム

 

2020年7月・470棟の床上浸水。

やっぱり桁違いの雨量だったのだな。

 

不思議に思うのは、球磨村だけではなく、他の洪水浸水想定区域でもボートなどの避難具が常備されてないこと。

輪中と呼ばれる昔から水害に遭う地域には、家にボートがくくりつけてあって、洪水の時に浮かべて使うのだと聞いたことがあります。

通称「上げ舟

昔の人の知恵なのですが、今も使えると思いません?

逃げ遅れた人が乗り込めるような、浮くモノが施設内にあるといいと思いました。

3人乗りですが、初心者でも簡単に扱えそうなボートがあります。

 

 

 関連リンク 教科書でみたあの『輪中』へ行く :: デイリーポータルZ

 

球磨村の避難では地元の男性が機転を利かせて、保育園のプールのタライを船にして避難しているニュースを見かけました。

そうそう!そういう日常で使う物が、いざってときに避難具として活用できるような防災も考えるといいなと思いました。