熊本県・球磨村の特別養護老人ホーム「千寿園」では隣接する川が氾濫しました。
自力で避難が難しい入所者さんのため、千寿園の職員さんや、地域住人さんらで2階に引き上げるなどした51人は助かりました。
ニュースで救助にあたった地域住人さんがインタビューにお答えになっておられましたが、73歳!
畑仕事や林業で丈夫な高齢男性も多いでしょうが、それにしても73歳で救助の手伝いはハードだと思います。
球磨村は川沿いに道があり、豪雨の中、役所の方や消防員も駆けにくい場所なので仕方が無いんですが、インタビューで「4~5時間水に浸かって励ましていた」と聞き、命がけの救助!
この73歳の男性はすごいです。拍手を送りたい。
ニュース・特養ホームで14人心肺停止 必死の救助の様子を語る(20/07/05)
パーンと窓ガラスが割れて水が入ってきたとのこと。
そうか、ガラス張りだから割れてしまったんですね。
球磨村は、2015年の国勢調査によると、総人口は3698人で、人口増減率がマイナス12.97%、平均年齢は55.22歳。
球磨村にこんなに立派な特別養護老人ホームがあることに驚きました。
玄関の雨よけも大きく作られていて、いい作りで、利用者のことを考えてると感じました。
そんな介護施設が被害にあったことは、本当に残念です。
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◆災害の危険がある施設に避難確保計画策定の義務付けがされている
浸水が想定される地域における社会福祉施設、学校、医療施設等の要配慮者利用施設では、洪水時等における円滑かつ迅速な避難の確保を図るため、避難確保計画等の作成など、水害に備えた対応が2017年以降、義務付けられています。
千寿園は避難対策を取られていたと思いますが、増水が想定外のはやさだったのでしょう。
しかし、豪雨とは言え、高齢者が経験したことの無いような増水には何か理由があるのではないか。
GoogleMapで川の上流を遡ると、大きなハゲ山があるような?
山は定期的に伐採が必要なのですが、雨を蓄えてくれるはずの土壌が無くなり、水が川に流れやすくなっていたのかも。
仮に山の伐採が原因のひとつだとすると、以前より川が増水するスピードがはやくなっていたことが考えられます。
また千寿園の少し下流に川の合流地点がありました。
水位の高い本流が壁となって支流の流れが滞り局所的に水位が上昇する「バックウオーター現象」が起きた可能性があります。
◆特別養護老人ホーム「千寿園」の入所者さんのその後
父親が千寿園に入所されているという男性が駆けつけていました。
「連絡もつながらない」
インタビュー中に偶然、父親が救助されてきました。
あー、よかった!
入所者さんのうち、心肺停止となっている14人以外の51人は、自衛隊がボートで救出し2か所の病院に運ばれました。
搬送先は、熊本県多良木町の公立多良木病院に34人、人吉市の人吉医療センターに17人だということです。
病院も受け入れが大変だったと思います。ありがたいですね。
◆改善案を考えてみました。
川関連
・水位計の設置場所の見直し&必要があれば増設
近年、危機管理型水位計というのが、従来よりも費用を抑えて設置できます。
調べると少し下流の小川橋付近に危機管理型水位計が設置されていました。
・設置されている水位計の避難誘導の基準の設定の見直し
基準値が設けられてない場合、避難勧告が出ません。
球磨村で避難勧告は出たようですが、基準値の見直しが必要かもしれません。
・砂防ダム・谷止工の設置を考える
堤防は下流で氾濫する可能性があるでしょうし、川に砂防ダムを設けると水の流れが変わりますので地域住人との話し合いが必要でしょう。
砂防ダムは土砂が溜まったてきたら除石するなど、管理の継続が必要になります。
谷止工は洪水時などに発生する土砂の急激な移動を一時的に捕捉し、通常の流量時に徐々に下流に流下させることで、上流部で発生する土砂を安全にかつ平準的に流下させる機能があります。
平成25年九州地方整備局のレポートにて、
現在は「ダムによらない治水を検討する場」 において,熊本県,流域市町村とともに今後の治水対策 の検討を行っているところであるが,近年においても球磨川流域では頻繁に浸水被害が発生している状況である.
とのことで、かねてから球磨川流域では頻繁に浸水被害が発生していたことが伺えます。
平成25年九州地方整備局 より、以下の2案が提案されていました。
案 2:小川合流地点に「導流堤設置」
住民との話し合いの結果、平成26年に導流堤設置されており、洪水対策されていました。
参照 球磨村渡地区の浸水被害を防ぐために ~地域や熊本高専と連携した取り組み~.pdf
施設関連
・窓ガラスを割れにくくするため雨戸(シャッター)を設ける
一部の場所だけでも雨戸があれば流木などの侵入を防ぎ、窓ガラスが割れるのを遅らせ、避難するまでの時間稼ぎに有効だと考えられます。
周囲に塀を設けるのは費用がかかるので、根をしっかりはる樹木を垣根にし、クッションにするなどの工夫も考えると良いと思います。
・止水板の設置
玄関、廊下などに止水板を設置しておくと、室内への水の侵入を遅らせることができます。
・介護スーツなどの導入
スピーディーに避難させるため、日ごろから介護スーツ(パワースーツ)などのツールを利用して慣れておくのも防災につながります
・浸水想定を知る
国土交通省の地点別浸水シュミレーション検索システムで、浸水想定を知ることができます
どれくらいの防災が必要かの目安になります。
安全な場所に介護施設を建設できればいいのですが、そのような土地は地主さんが手放しませんし、価格も高価です。
また川沿いは住宅地と離れて建設しやすく、入所者さんの大声・騒音などのトラブルを避けられたり、眺めが良い、日向ぼっこしやすいなどのメリットもあります。
長年、氾濫したことのないような川沿いに介護施設が建てられるのは仕方が無いと言えます。
しかし、はじめから川の氾濫を想定した介護施設のつくりであれば、避難もしやすく安全が確保しやすくなりますよね。
今後、川沿いやハザードマップで水没が予想される地域の介護施設は、2階をメインフロアにするなどし、1階が浸水しても機能するような万が一に備えたつくりになるといいと思います。
入所者さんが助かったとしても、施設が利用できなくなると、その後の暮らしが大変ですから。