父の様子を母から電話で聞きました。
父は真っ直ぐ立つことができ、歩く練習もはじまりました。
支えが無いと立ってられませんが自分で右足を出すことはできます。
右手のリハビリもあり、硬直していた指が柔らかくなってきました。
電動ひげ剃りを使って自分でひげも剃ったそう。
父にはリハビリがとても疲れるようで、よく寝ているとのことでした。
「あんなにリハビリされて気の毒なくらいよ」と、父に同情的な母。
「でも今、リハビリをがんばらないと寝たきりになっちゃうからお父さんを励まさないと!」と私が言うと「そうね!寝たきりになったら困るわね。がんばってもらうように応援するわ!」と先ほどの同情的な態度はどこへやら。
母が父に話しかけると、こちらの言っていることをほぼ理解していしているらしく、様子からすると今回入院したことを反省しているようだと言っていました。
その3日後の土曜日。
父の病院へ見舞いに行きました。
確かに父は話しにくそうではありますが、コミュニケーションをとることができました。
はじめてお見舞いに来たときは、会話どころか意識も朦朧としていたので、ここまで回復したことにホッとしました。
しかし、すでに2週間以上入院しており、回復はこの程度までなんだな、とも同時に感じました。
父が「飴は?」と聞きました。
「ごめん、忘れちゃった」
駅で買おうと思っていてすっかり忘れていました。
父は、そうか、とあっさりした態度で残念がる様子こそ見せませんでしたが、飴以外に気になることが無い様子に悲しくなりました。
今思えば、言葉がうまく話せない父は話したくなかったのかもしれませんが「家のことで気になることや心配はない?」と質問しても首を横に振るばかり。
本来の父であればアレをこうして欲しいなど指示がでそうなものです。
その様子から父の脳のダメージは大きいように思いましたが、まだお医者さんから診断を聞いたわけじゃないし。
心配したってなにもならない!
そう自分に言い聞かせるのですが、これがなかなか難しい。
「じゃあ、これからお母さんのところへ行ってくるね」と声を掛けると、お母さんの世話をよろしく、と父の顔がくしゃっとなり今にも泣きだしそうでした。
その顔を見てグッと込み上げてくるものがありました。
娘の私にそういう顔を見せたことがなかったからです。
「うんうん、わかったよ」と言いつつも、心の中は不安でいっぱいでした。